「親が亡くなったら、多額の相続税を払わなければならないの?」 「実家があるだけで、税務署から連絡が来る?」
相続が発生したとき、多くの方が真っ先に不安に思うのが税金のことです。しかし、実際に相続税がかかるのは、亡くなった人のうち約10%程度(10人に1人)と言われています。
この記事では、1級ファイナンシャル・プランナー(FP)の視点から、相続税がかかるかどうかの境界線である「基礎控除」の計算方法と、知っておくべき節税の基本をわかりやすく解説します。
【判定】相続税がかかるかどうかの「計算式」
相続税には、誰でも引ける「基礎控除」という非課税枠があります。遺産の総額がこの枠内に収まれば、相続税はかかりませんし、申告の必要もありません。
基礎控除の計算式
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
計算例
- 相続人が1人の場合: 3,600万円まで非課税
- 相続人が2人の場合: 4,200万円まで非課税
- 相続人が3人の場合: 4,800万円まで非課税
【1級FPの補足】 ここでいう「法定相続人」には、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして人数に含めます。養子がいる場合は人数制限(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで)があるため注意が必要です。
相続税の計算の流れ:5つのステップ
相続税の計算は一見複雑ですが、実は以下の5つのステップで順番に進めていく仕組みになっています。
① 正味の遺産総額を算出する
まずは、亡くなった人のすべての財産(現預金、不動産、有価証券など)を合計します。ここから借金や葬儀費用などの「マイナスの財産」を引き、さらに生命保険金などの「非課税枠」を差し引いたものが、計算の土台となります。
② 基礎控除額を差し引く
算出された遺産総額から、前述の「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を差し引きます。
この時点で残額が**「0円以下」であれば、相続税はかからず、申告も不要**です。残額がある場合、その金額が「課税遺産総額」となります。
③ 法定相続分で「仮に」分ける
ここが相続税計算の大きな特徴です。実際の分け方に関わらず、一度**「法定相続人が法律通りの割合で分けた」と仮定**して、各人の取得金額を算出します。
法定相続人・法定相続分についてはこちら
④ 税率をかけて各人の税額を合計する
「仮に分けた金額」に対して、以下の速算表に基づいた税率をかけ、各人の税額を出してから、それらをすべて合計して**「相続税の総額」**を決定します。
⑤ 実際の遺産分割の割合で按分し、個別の税額を出す
最後に、ステップ④で出た「税金の総額」を、実際の遺産分割の割合で分け合います。ここで配偶者の税額軽減などの各種控除を適用し、最終的な納税額が決まります。
相続税の税率表(速算表)
相続税は、課税される金額が多くなるほど税率が上がる「超過累進税率」が採用されています。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | - |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【FP1級のポイント】
税率は「遺産総額」にかかるのではなく、一度「法定相続分で分けた後の金額」に対してかかります。そのため、相続人の数が多いほど、一人当たりの金額が下がり、適用される税率も低くなる(=節税になる)仕組みになっています。
相続税の対象になる「財産」とは?
現金や預金だけでなく、以下のものもすべて合計して計算します。
- 本来の相続財産: 現預金、不動産(土地・建物)、有価証券、貴金属、車など。
- みなし相続財産: 生命保険金、死亡退職金。(※それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります)
- 生前贈与財産: 亡くなる前7年以内(法改正により延長)に贈与された財産など。
相続税を軽減する特例
基礎控除を超えてしまっても、以下の特例を使えば税額が大幅に減額される可能性があります。期限内(10ヶ月以内)の申告が必須です。
① 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者が相続する場合、**「1億6,000万円」または「法定相続分」**のどちらか多い金額までは、相続税がかかりません。戸籍上の配偶者が対象で、婚姻期間は問いません。
② 小規模宅地等の特例
亡くなった人と一緒に住んでいた自宅の土地などを相続する場合、一定の要件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。3,000万円の土地が600万円の評価になるため、大きな節税効果が見込めます。
納税資金はどう準備する?
相続税は、原則として10ヶ月以内に「現金」で一括納付しなければなりません。
不動産の占める割合が大きい場合: 遺産が「不動産だけ」などで現金が少ない場合、遺産分割もかねて売却という手段もありえます。
生命保険の活用: 保険金はすぐに現金で受け取れるため、納税資金の準備として最も有効な手段の一つです。
まとめ:相続税対策は早めの現状把握から
相続税は「起きてから」ではできる対策が限られます。まずは財産の総額が基礎控除を超えるのか、超えるとしたら納税資金は足りるのか、専門家に相談してシミュレーションを行うことが大切です。
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